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neuromans.
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かの有名なクラッカー
仮想世界の女王様
Ø1尽くしの王国を築き
虚数の兵士に傅かれる
いつも恒例の『鏡よ鏡』(
なのに今日に限って応答なし
「『この世で一番カワイイのは誰?』」
沈黙したままのディスプレイの前で《女王》は愉快そうに唇を歪めた。
侵入したのは《SNOW-WHITE》。この王国を幾重にもガードするセキュリティシステム《ミラー》は正常に機能したまま彼女を通したらしい。《女王》の宝物倉とも言うべきデータベースには手も触れず、一通の写真つきメールを残しただけで引き上げていった。
「随分と自信があるようじゃないか。愉快犯」
《女王》はプリントアウトした写真を目の前にちらりと翳す。
ハッカー達の場であるV・D(ではどのような姿を取るもそれぞれの自由だ。《SNOW-WHITE》と名乗るそのクラッカーの外見データは、ネットアイドル並みに可愛かった。CGではない、取り込み写真から造り上げたものだ。無論本人のデータとは限らないけれど。
「ロリ顔」
《女王》は醒めた口調で呟き、写真をディスプレイの横に留める。
《SNOW-WHITE》が残したメールはただの挨拶だ、再び来襲するに決まっている。
さて、その時は無事に帰れるかな?
ツールを点検し終えて、よし、と彼女はレースの手袋をはめた手を鳴らした。
ほっそりとしたミニドレスの上半身はびっしりと豪奢な黒レースで覆われ、胸元にもふわふわと大きなリボン。限界まで短いスカートからすらりと伸びた脚にはゴルチェ風のレースアップブーツ。殺風景なネットラインには些か過剰なそのファッションが童顔の《SNOW-WHITE》にはよく似合う。
「うーん。髪、オレンジかなあ……ん、やっぱりストロベリーピンク」
ふわふわの猫っ毛の一筋を引っ張ってみてから、現実世界でいえば水平線に見えるだろう、《女王》の王国を見やり、にっこりと笑う。
「うふふ。今行くね、女王サマ」
光で緻密に描かれたようなセキュリティシステム。その遠望からして、クラッカーの間では《林檎》と呼ばれる女王の王国。多くのクラッカーが挑戦しては完膚無きまでに撃退されてきた。
クラッカー同士の戦争だもの、V・Dに繋がったまま暴走して植物人間にされたって文句は言えない。
何故そこまでしてあの王国に挑みたがる?
「そこに山があるからさ! よーし行くぞ、《セブンス・ドワーフ》」
がっちりとしたブーツも軽やかに、ヘッドマイクでお気に入りの音楽を聴きながら。
光の王国の最奥で《女王》が見守る中、チェス盤に一つの白い駒が現れる。黒駒が整然と陣を構える盤面に、白い女王の駒が一騎。
やれやれ、と《女王》は苦笑じみた表情を浮かべる。
勇ましい無謀な子猫。なんて可愛い。
「《SNOW-WHITE》!」
「わあ!」
振り返るとそこにいたのはおどおどとした表情の猟師だった。CGだがなかなかリアルだ。作る人に似るってホントかな、と、彼女はまだ見ぬ《女王》の像を想像してみる。
「あはは、侵入バレバレ?」
「はあ。すいませんけど侵入路消さしてもらいました」
「えー? 出らんないじゃん」
「はあ、職務なもんで」
「そりゃあ当たり前だね。アンタ迎撃システムっぽくないよ、それじゃ猟師じゃなくて森番だよ……」
「はあ、すいません。あの、ここにおられるんでしたら追跡さしてもらいますけど」
「腰の低いシステムだなー」
成程、システムが強化されている。
さして困った顔もせずに《SNOW-WHITE》は目を瞠った。まずは退路を断つ。生命の保証がこれでゼロだ。どうやら《女王》を本気で怒らせたらしい。
なのに、この猟師は侵入者に喰らいつくワームタイプのデバッグ・プログラムではない。ただのセンサーだ。
「遊ぶつもりだな。じゃあキリキリ行くよ」
「あ、はあ」
「あ、タロちんタロちん、帰り道キープ」
手にしていた赤い小さなバッグから出したのは陽気なドワーフを模したささやかなツール。足元に置いてやると、とことこと自分で動き出す。
「何かあたしヘンゼルとグレーテル?」
くすりと笑い、猟師を手招きしてまた歩き出す。
白雪姫に差し向けられたるは──
宝石細工のうつくしい櫛
(エネルギー遮断の怖い櫛)
v.s.ドワーフ2&3 虚数データ注入、無力化成功
お次はきらきら輝く素敵なリボン
(触れれば最後、データ改竄ウイルス・ワーム)
v.s.ドワーフ4&5 解析おまけにデータいただき
だが御用心、その腕前はお見通し
黒い駒を小出しにする《女王》の意図は?
「わ、やば、ロクちゃんナナちゃんあれ崩して!」
忽然と周囲に浮かび上がった光の壁を見、《SNOW-WHITE》の顔から初めて余裕が消えた。今までの単体デバッグ・システムが陽動であることは解っていた筈なのに、こうも見事に包囲されるまで気づかなかったとは。
「ああ、無駄です。これは《林檎》です」
猟師がいつもの哀しげな口調で言った。
「え? リンゴ? だってそれここ全体の」
「それは《鏡》です。《林檎》とはマスターが、この前貴方が侵入した時のデータを元に書いたプログラムで、つまり貴方だけに対応するんです」
「えー? あたし痕跡残してないよ」
「はあ、それはおれが貴方が出ていく時ついてって貴方のツールを色々調べたからで」
「何〜? それ早く言ってよ〜」
光の壁に取りつこうとしていたドワーフがころりとひっくり返り、そのまま動かなくなった。
あーあ、と《SNOW-WHITE》はその場にへたり込んで頬を膨らませた。
「まずいなあ、まずいよぉこれ」
「ですねえ」
「猟師、キミもしかして相当優秀なんだね」
「はあ、マスターだいぶリキ入れて作って下さいましたからねえ」
考えてみれば確かに廉価版の人工知能ではなくお手製だ。ユニークなデバッグプログラムと同様、《女王》がオリジナリティに拘っているだけかと思ったが、甘すぎたらしい。
うーん、と唸っていると猟師が嬉しげな声を上げた。
「あ、マスター」
出たな親玉。
《SNOW-WHITE》は憮然として上目遣いに見上げた。すらりと背の高い人影が微かに目を細めてそこに立っていた。
女王は女王でもDrAg−QueEn
座り込んでるカワイイ子猫
屍体嗜好の変態王子サマなんてヘルプは無用
何故なら最後の最後のどんでん返し
「嘘つき〜〜〜っ!」
「だぁれが嘘つきだ」
低くドスの利いた声と共に手首を掴まれて《SNOW-WHITE》はふにゃあと変な悲鳴を上げた。《女王》の薄絹の袖から突き出ているのは、どう見てもがっしりとした男の腕だった。
「逃げんな侵入者。無駄だけどな」
豊かに波打つ長い髪を空いた片手でうるさそうに掻き上げる。念入りに化粧の施されたその顔だけなら確かに美女に見えないこともないが。
「男なんて聞いてないよぉ!」
「言いふらした憶えもねぇんだよ」
「何その格好、今時ビジュアル〜めっちゃ似合うけど」
「うるせえ。人の私服の趣味に口出すな、てめぇだって恥ずかしいくらいゴスロリだろうが」
「いいじゃんネットの中くらい、うち服装規定厳しいんだから!」
ひっくり返ったままだったドワーフ達を起こしつつ、猟師は一人で哀しげに吐息した。
仮想世界(の超フリーク
ココロはどちらも似たもの同士
捕らえられたのはどっち?
「お前そのデータ、ホンモノ?」
「そっちは?」
「気ィ強いオンナ……」
「外で普通のカッコしたら教えたげる」
end.
イッちゃってます。ゴシックロリータvsドラッグクィーン(どちらの単語も知らない方、それでいいんです)。7人のドワーフもちゃんと出したかったですがはしょりました。出したらやはり変なカッコしているんだろうか。
現実のクラッキングではなく、仮想世界で仮想の肉体作ってRPGやってるようなイメージで考えて下さい(知らないですホンモノなんて)。ちなみにドラッグクィーンもただのファッションです、ホンモノではありません(でなきゃラストこうならない)。
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